フィルターは空気や水から汚染物質を取り除き、衛生的で快適な社会と暮らしを守る役割を担っています。その用途は、エアコンや加湿器のような人々の健康に関わるものから、自動車や住宅などの生活空間、オフィスや工場などの産業分野にまで広がり、見えないところで社会を支えています。
取り除く物質も、ほこりや花粉から、目に見えない菌やウイルス、煙や臭いの微粒子に至るまで多岐に渡ります。これらの汚染物質を、基本的には薄い不織布の繊維に吸着させて捕集します。その方法は、粒子を不織布の繊維に衝突させたり、さえぎったりして捕えるほか、近年では静電気で吸着させる方法が重要な技術となっています。
倉敷繊維加工は、材料の配合や形状構造、帯電加工や活性炭の複合化などの加工技術を持ち、さまざまな機能を持つフィルター用「不織布」の開発・製造を行っています。なかでも、抗ウイルス機能や抗アレルゲン機能、複数の成分に対応する脱臭機能を持つものが代表的な製品です。
私は商品開発部でフィルターの開発を担当していますが、求められる性能基準が年々高くなってきたのを感じています。捕集対象がミクロン単位からナノ単位へ小さくなったり、捕集性を上げながら通気性も良くするという矛盾する性能を求められたり…。さらに、機能付加が必要なことも多く、例えば、一枚のフィルターに5〜9種類ものガスに対応する脱臭機能を持たせて欲しいといった要望もあります。
フィルターの可能性に限界はないので開発は大変です。「10年間性能が保てるように」と言われたときは、一日中手洗いを繰り返すこと120回、気が遠くなりそうな耐久試験に没頭していました。今までの材料構成では全く性能が出なかったOA機器のフィルターでは、材料メーカーとのやりとりを繰り返し、色々な素材や薬剤の試験を行い、最後はひたすら自分でプリーツを試作。求められる性能に到達し、製品化できたときは非常に大きな喜びを感じました。
近年は、従来の用途や機能をさらに進化させた次世代型フィルターが注目されています。そのひとつが、当社が日本原子力研究開発機構(現 量子科学技術研究開発機構)と共同で開発した金属イオン除去フィルター「クラングラフト」。薬品中の不純な微量金属イオンをPPT(1兆分の1)レベルで除去する先進技術として、微細加工が進む半導体製造業界から非常に高い評価をいただいています。この技術は、含有金属が品質に影響を及ぼす医薬やバイオの分野でも活躍が期待されます。
また、フィルターは、一般に有害物質を「取り除く」というイメージがありますが、最近は有効成分を「放出する」フィルターへの期待が高まっています。私自身も、リラックス効果や美肌効果のあるビタミンなどを放出し、世の中を元気にするフィルターができればと、研究開発に取り組んでいます。
さらに、次世代エネルギーとして注目の高まる燃料電池向けに、水素を効率よく分離するフィルターの開発も大きな目標。来たるべき水素社会に貢献できるフィルターを実現したいですね。
日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイなどでシリーズ展開中
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