工場から排出される廃棄物をなるべく減らし、ゼロにしようというのが社会的な課題です。しかし、様々な工場から排出される廃棄物は多種多様であり、リサイクルはおろか、処分することさえ難しいものもあります。その代表が、水分を多く含んだ食品工場から出る廃棄物。燃えにくいので、化石燃料を使う大規模な焼却炉が必要になるなど、工場内で処理するのはかなり厄介です。
クラボウは、長年培ってきた流動層焼却技術を活用し、さまざまな廃棄物をバイオマス燃料として焼却してきました。流動層焼却とは、特殊な砂を高温の流動状態に保ち、その中に焼却物を投入することで、瞬時に完全焼却させる技術です。さらに、焼却炉で発生する熱を利用した流動層ボイラも開発。燃焼熱を回収してエネルギーとして活用したり、タービンを回して発電したりすることも可能です。実際にクラボウは、流動層ボイラを使ったバイオマス発電所を建設し、運営しています。
そんな燃焼技術を日々磨いている、環境メカトロニクス事業部エンジニアリング部の林幸生のもとに、新しい案件が飛び込んできました。サントリー知多蒸溜所で、ウイスキーの搾り粕を処理するとともに、有効活用して欲しいという依頼です。「知多」などのウイスキーを製造する同工場では、毎日大量の搾り粕が発生し、その量は何と1日100トン以上。既存の焼却炉は、ガス炊きバーナーを併用するものでした。
林は考えます。ウイスキー粕は初めてだが、過去に焼酎粕や鶏糞まで燃やした実績があるクラボウの流動層燃焼炉なら何とかなりそうだ。問題は「ただ燃やすだけでなく有効活用したい」というもうひとつの注文です。悩んで過去の事例を洗い直しているときに、アイデアが閃きました。「そうだ、熱エネルギーとして利用しよう!」焼却炉にバイオマスボイラを組み合わせ、排熱を原料のコーンを蒸らす工程で再利用する。そうすれば、化石燃料もほとんど要りません。
提案に際して、スペースを効率よく活用するために設備レイアウトなどをコンパクト化できないかと考えた林は、3D CAD を活用しようと決心します。海外製のソフトを独学で習得し、提案用の3D 図面を完成させました。
林の奮闘が実を結び、プレゼンは大成功。ウイスキー粕の処理能力だけでなく、燃焼熱の有効利用で化石燃料をほとんど必要としない点が高く評価されました。それでも、「プラントは運転するまでは何があるかわからない」と、夜も眠れないほど気を張りつめていた林でしたが、杞憂に終わります。大きなトラブルもなく無事に完成。3D CADの活用も成功の一因でした。
世の中の工場には、今回のウイスキー粕よりもさらに厄介な廃棄物が存在します。クラボウは、流動層焼却技術を駆使してさまざまな廃棄物の焼却に挑み、バイオマスボイラと組み合わせてエネルギーに変えていきたいと考えています。全国のあらゆる場所に設置でき、あらゆる廃棄物を処理できるように、さらなるコンパクト化や遠隔コントロール化にも取り組んでいます。焼却するしかない廃棄物からエネルギーを産み出し、地域に還元する。いわば、「地焼地産」の発想で廃棄物を再資源化することが私たちの目標です。
日本経済新聞、日刊工業新聞などでシリーズ展開中
エピソード1
アニマルフリーな羽毛で
心まで暖めるクラボウ
エピソード2
3Dプリンターで
街づくりを変えるクラボウ
エピソード3
畜産の持続可能性を
切り拓くクラボウ
エピソード4
半導体の品質をセンシング
技術で支えるクラボウ
エピソード1
ロボットの「できない」を
可能にするクラボウ
エピソード2
繊維でウイルスから
社会を守るクラボウ
エピソード3
フィルターで空気と社会を
変えるクラボウ
エピソード4
iPS細胞で健康寿命を
支えるクラボウ
持続可能な開発目標(SDGs)に対するクラボウの姿勢と、関わりの深い事業活動を紹介します。
身近な暮らしの中で使用されているクラボウ製品をご覧いただけます。
クラボウグループの挑戦の歴史やその原点、これからの未来に向けた取組みをご紹介。
当社の事業と人材採用・人材育成に対する考え方を紹介。募集要項やWEBエントリーの窓口も。