面白いことやってやろう。iPS細胞で健康長寿を支えるクラボウ。技術研究所 基盤技術グループ 研究員 加藤依香
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難病の治療や再生医療…iPS細胞技術の実用化を世界中が待ち望んでいる

ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授が、世界で初めて作製に成功したiPS細胞に大きな注目が集まっています。従来の医療では困難だった病気の治療や、失われてしまった身体の機能を取り戻せる可能性を秘めているからです。
しかし、iPS細胞を実際の医療や創薬の研究に利用するためには、まだまだ沢山の課題があります。なかでも、iPS細胞をねらい通りの臓器や組織の細胞に育てる高度な分化誘導技術は、実用化を支える最も重要なポイントのひとつです。
クラボウは、バイオメディカル事業で30年以上もヒト細胞を扱ってきた経験を活かし、iPS細胞の分化誘導技術の研究に着手。人体の細胞の中でも応用範囲が広く、ニーズの高い、神経細胞をつくる技術の開発に取り組み、創薬研究の支援を目指しています。

無限の可能性をもつ生命力に満ちたiPS細胞を均質に育てるのは難しい

私は現在、技術研究所においてiPS細胞の分化誘導技術の研究に携わっています。iPS細胞はどんな細胞にもなれる万能の細胞です。それだけに、安定した品質で特定の細胞に育てるのは難しく、世界中の研究者が試行錯誤しながら取り組んでいます。
しかも、この分野は歴史が浅く、参考にできる先例もほとんどありません。新米の研究者である私は論文に目を通したり、学会に参加したり、社外の研究機関で指導を受けたりしながら、実験と検証を繰り返す毎日です。
iPS細胞の培養は通常のヒト細胞と比べて時間がかかり、一度の結果検証に約2か月を要します。そのため、毎日細胞の顔色をうかがい、「次こそ、ちゃんと育ってね」と細胞に語りかけることも(笑)。ときには、培養液の設定を間違えて思わぬ方向へ細胞が育ったりなど、失敗は数知れず。しかし、先進的な研究では失敗こそが重要な経験なんだという上司の声に励まされながら、神経前駆細胞(あらゆる神経系の細胞になれる分化細胞)をつくる技術を習得しました。

世界中の誰もが健康長寿を享受できる社会のために研究を活かしたい

私は高校生のときに祖父をガンで亡くしました。そのときから、将来は病気を治すことに関わりたいと考えていたので、今の仕事はまさに天職だと感じています。神経疾患には、うつ病、アルツハイマー病やパーキンソン病など、まだ治療薬の無い病気が多く、それらの創薬研究に貢献したいという想いで、私たちは神経細胞への培養技術を研究しています。まずは、高品質な神経前駆細胞や神経細胞を安定して供給できる量産技術を確立するのが目標です。私たちの育てた神経細胞を使って、病気に苦しむ人々を助ける新薬が開発できることにつながれば、と願っています。
まだまだ先の話ですが、いつかは自分の細胞を使ってiPS細胞を簡単に育てる培養キットを開発したいという夢も。それが出来れば、若いときに作成した自分のiPS細胞で、永遠の若さが手に入るようになる、なんてことが実現する日が来るかも知れませんね。