ニュース
PEEK樹脂を基材とした耐熱粘着テープを開発
-半導体製造工程における、保護テープやラベルへ展開―
クラボウ(資本金 220億円、本社 大阪市中央区、社長 藤田晴哉)化成品事業部と技術研究所は、耐熱性の高いスーパーエンプラフィルムの開発と製品ラインアップの拡充を図っています。このたび、耐熱フィルムシリーズ(注1)の新しい製品として耐熱性や耐薬品性に優れたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂フィルム「EXPEEK®(エクスピーク®)」を基材とした、耐熱粘着テープを開発しました。
4月6日(水)から東京ビッグサイトで開催される第7回高機能フィルム展(注2)に出品します。
1.開発の背景
半導体は、高温、強酸・強アルカリの薬品など厳しい環境下で製造されます。このため、薬液や発生ガスにより汚れた装置内の洗浄や、ウエハに不要な薬液を付けないための保護剤塗布・除去などの作業が多くあり、工数削減による生産性向上やコストダウンができる新しい保護剤が求められています。しかし、保護剤には、装置内の温度が200℃以上となる高温下での耐熱性や耐薬品性などの厳しい条件をクリアすることが求められます。
このようなニーズを受け、当社の高機能PEEKフィルム「EXPEEK®(エクスピーク®)」を基材とし、高温下でも使用できる耐熱粘着テープを開発しました。
「EXPEEK®(エクスピーク®)」耐熱粘着テープは、保護テープとして薬液が使われる装置内に貼り、汚れたら剥がすことで装置内の洗浄作業の軽減ができます。また、ウエハを保護するためのテープとして使用することで、従来の保護剤の塗布工程やそれを除去する洗浄工程の削減もできます。今後は、顧客の生産工程での検証を行い、実用化を目指してまいります。
2.商品の概要
本耐熱粘着テープは、最新鋭のフィルム工場であるクラボウ三重工場(注3)で生産される「EXPEEK®(エクスピーク®)」を基材とした粘着テープです。
「EXPEEK®(エクスピーク®)」は、当社独自の製膜技術である高温二軸延伸加工技術の活用により、一般的なPEEKフィルムよりも耐熱性や機械強度、透明性等が優れる高機能フィルムです。
本耐熱粘着テープは、「EXPEEK®(エクスピーク®)」の特長を活かしており、200℃以上の耐熱性があります。
一般的なポリイミドテープよりも耐アルカリ性に優れるため、アルカリエッチングなどより多くの工程に適用できます。
粘着テープの種類は、耐熱性やアウトガス性などの必要条件によって、アクリル系、シリコーン系のテープが選択可能です。また、耐熱ラベルとして、バーコード等を印刷することも可能です。
(1)粘着テープの種類
200℃以上の加熱後、糊残りなく再剥離が可能です。
シロキサンなどのアウトガスを嫌う用途にはアクリル系テープを用意しており、200℃の耐熱性を有します。
200℃超の耐熱性があるシリコーン系テープは、高温下で使用後も、粘着力を維持します。
|
アクリル系テープ |
シリコーン系テープ |
再はく離可能な温度 |
200℃ |
230℃ |
(2)用途例
・半導体製造時の部材や装置、ウエハの保護テープ、など
・高温下で使用されるバーコード、QRコードなどのラベル
(参考)基材フィルムについて
「EXPEEK®(エクスピーク®)」の特長
・耐熱320℃(一般的なPEEKフィルムよりも150℃以上高い)
・酸・アルカリなど、耐薬品性に優れている
・真空中でもアウトガスが極めて少ない
・透明性に優れている(窓の保護、汚れ付着量を認識しやすい)
・低吸水性(加熱時の寸法変化が小さい)
フィルムの基本性能
項 目 |
EXPEEK®(エクスピーク®) 25μm |
測定方法 |
ガラス転移温度 Tg |
320℃ |
熱機械分析(TMA) |
加熱収縮率 |
0.7/0.6 % (MD/TD) |
JIS C5152 200℃×30分 |
真空中アウトガス |
有機成分検出なし |
残留ガス分析 減圧10-4Pa、常温 |
ヘイズ |
4% |
JIS K7361 |
吸水率 |
0.07% |
JIS K7209 |
引張弾性率 |
3400/3400 MPa (MD/TD) |
JIS K7127 |
引張破壊応力 |
260/280 MPa (MD/TD) |
JIS K7127 |
引張破壊ひずみ |
160/150 % (MD/TD) |
JIS K7127 |
3.今後の展開
お客様のご要望に応じて、必要な性能を有するテープ設計を行います。
4.お問い合わせ先
クラボウ 化成品事業部
エンプラグループ 明星(ミョウジョウ)
〒541-8581 大阪府大阪市中央区久太郎町2-4-31
TEL:06-6266-5444 FAX:06-6266-5442
以 上
(注1)スーパーエンプラフィルムのラインアップについて
当社で展開しているスーパーエンプラフィルムは、独自の製膜技術である、高温二軸延伸加工技術により耐熱性を高めたフィルムを中心としたラインアップになっています。
現在のラインアップは、以下の5品目があります。
・熱可塑性ポリイミドフィルム「ミドフィル®」
・PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)系フィルム「エクスピーク®」
・特殊ポリエステルフィルム「トルセナ®」
・特殊ポリスチレン系フィルム「オイディス®」
・特殊ポリオレフィン系フィルム「コゼック®」
スーパーエンプラフィルム以外には、ホットメルト・ラミネートフィルムやエラストマー多層フィルムなどの開発・生産・販売を行なっています。
(注2)第7回高機能フィルム展
開催日:平成28年4月6日(水)~8日(金)
場所:東京ビッグサイト 東京都江東区有明3-11-1
小間番号:E26-49(高機能フィルムゾーン)
(注3)クラボウ三重工場について
平成24年4月に操業を開始した機能性フィルムの生産工場です。エラストマー多層フィルム用の第1工場、ホットメルトフィルム・ラミネートフィルム用の第2工場、スーパーエンプラフィルム用の第3工場の3工場からなり、クリーンルームを導入し、高品質の機能性フィルムを生産しています。各種樹脂に対応した独自の製膜技術を有しており、汎用製品からスーパーエンプラ製品まで幅広い差別化商品の生産が可能です。
(1)工場名:クラボウ三重工場
(2)所在地:三重県津市江戸橋3丁目76番
(3)敷地面積:約45,000㎡
(4)延床面積:約15,000㎡
(5)従業員数:約40名
(6)生産品目:ホットメルトフィルム・ラミネートフィルム、スーパーエンプラフィルム、エラストマー多層フィルム など
(7)総生産能力:7,000t/年
(8)総投資額:約60億円(建物、設備)