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人センサー集団を活用した熱中症リスク管理システムとスマート衣料の開発着手について
~クラボウ、大阪大学、信州大学、日本気象協会、ユニオンツールでの開発がスタート~
クラボウ(資本金 220億円、本社 大阪市中央区、社長 藤田晴哉)は、国立大学法人大阪大学(以下「大阪大学」)、国立大学法人信州大学(以下「信州大学」)、一般財団法人日本気象協会(以下「日本気象協会」)と共同で、熱中症予防対策に特化したリスク管理システムおよびスマート衣料「Smartfit(スマートフィット)®」の開発を開始します。本年5月から大手建設・運送会社の協力のもと200人規模のモニター調査を実施し、平成30年度の実用化を目指します。なお、IoTプラットフォーム(注1)は、ユニオンツール株式会社(以下「ユニオンツール」)との取り組みにより構築します。
1.取り組みの経緯について
近年、平均気温が上昇する中、熱中症による死傷者数が増加傾向にあり、屋外での作業が多い建設業、運送業などでは熱中症予防対策の重要性がこれまで以上に高まってきています。これまでの熱中症予防対策としては、暑さ指数であるWBGT値(注2)を参考とした休憩管理システムやスポットクーラーを設置した休憩所の確保、冷却ファンを備えた作業服などの導入が行われていますが、各作業者の体調管理は、基本的に“自己管理”が中心のため、企業としても作業者個人レベルでのリスク管理が十分できていないのが実情です。また、現在推奨されている熱中症リスクの評価法は、WBGT値や気温、湿度などの環境条件に加え実施作業の負荷の度合いなどから、一定の評価区分に沿って相対的にリスクを評価する方法です。しかし、この手法では対象となる場所全体のリスクを評価するだけで、炎天下と日陰など実際の作業現場において異なる環境条件や作業者の個別事情を踏まえた判断評価を客観的にリアルタイムに行うことが難しいという課題があります。
そのような状況の中、クラボウでは、実際の各作業現場や各作業者の個別の健康状態などをピンポイント(局所)で数値化し、熱中症リスクを把握・予測するような管理が重要になると考え、従来の熱中症リスク評価法に比べ、簡便かつ高精度な評価(客観的かつ定量的な低減効果を把握できる予防策の評価)ができる「超局所リアルタイム熱中症リスク管理システム」の構築を目指してまいります。
2.システムの概要ついて
今回開発を目指す「超局所リアルタイム熱中症リスク管理システム」は、心拍センサーなどを備え付けたスマート衣料「Smartfit(スマートフィット)®」から作業者の心拍数や体表温度などの生体情報を取得し、気象情報そして各地域での緊急搬送情報を融合した独自のアルゴリズムで解析した新指標をもとに、リアルタイムに熱中症のリスクを予測し、評価および管理するシステム(特許出願済み)です。取得したデータは、クラウドサーバーに情報が自動的に送信され、解析された結果を現場管理責任者および作業者個人にリアルタイムに伝達され確認することができます(資料1)。
このシステムにより、工事現場全体の危険度だけではなく、スマート衣料「Smartfit(スマートフィット)®」を着用した作業者の集団(人センサー集団)から見える個々の作業現場(超局所)の危険度と作業者個々の個別事情の危険度をリアルタイムに判断できるようになります(資料2)。
3.開発体制について
解析用のアルゴリズムと評価方法の構築は、次の役割分担のもとクラボウ、大阪大学(基礎工学研究科、医学系研究科、医学部附属病院)、日本気象協会の3者で共同開発を進めます。また、クラボウと信州大学(繊維学部)では、同大学の先進繊維工学および感性工学の知見を活かし、高精度な生体情報の取得を可能にするセンサーの組み込みと快適な着心地の両面を兼ね備えたスマート衣料「Smartfit(スマートフィット)®」の共同開発を行います。なお、生体情報を送信する心拍センサーおよびIoTプラットフォームの構築は、ユニオンツールと取り組みます。
クラボウ |
全体およびモニター調査の統括、スマート衣料および最適な素材の開発、システムおよびスマート衣料「Smartfit(スマートフィット)®」の販売 |
大阪大学 基礎工学研究科 |
生体情報などをもとにしたデータの解析と熱中症発症リスクの評価アルゴリズムの構築 |
大阪大学 医学系研究科 医学部附属病院 |
酷暑環境におけるモニター調査のアドバイスとフォローおよび結果の医学的分析と考察 |
日本気象協会 |
予測モデルを構築するための気象データの提供およびモデルについてのアドバイスと指標作成 |
信州大学 |
生体情報を高精度に取得できる、快適な着心地のスマート衣料の開発 |
ユニオンツール |
心拍センサーおよびIoTプラットフォームの構築 |
4.今後の展開について
今回の取り組みに賛同いただいた大手建設・運送会社9社の協力のもと、本年5月から200人規模のモニター調査を実施します。作業者の方々にスマート衣料「Smartfit(スマートフィット)®」を着用していただき実際の夏場の作業環境下でのデータ収集を行うとともに、着用者からのご意見やご要望なども取り入れ開発に活かします。モニター調査で得られたデータをもとに熱中症リスク評価アルゴリズムの高精度化等を行うと同時に関連ビッグデータの集積を進め、平成30年度には建設、運送業界向けの「超局所リアルタイム熱中症リスク管理システム」について各社との共同研究・開発により実用化を目指します。その後、屋外大規模イベント分野での用途展開を視野に入れ、2020年の真夏に開催される東京オリンピックや野球・サッカー大会、野外フェスティバルなど屋外での大規模イベントでの活用を目指してまいります。なお、将来的には高齢者の日常生活における熱中症リスク管理なども行うことを視野に入れて研究・開発を進めます。
(1)モニター調査期間:平成29年5月~9月
(2)協力企業:(建設関係)株式会社大本組様、鹿島建設株式会社様、株式会社竹中工務店様、
株式会社藤木工務店様、など7社
(運送関係)株式会社サンワ様、株式会社太陽商会様
*50音順
(3)販売開始:平成30年度中
5.お問い合わせ先
クラボウ 繊維事業部 技術部 開発課 担当:藤尾
〒541-8581 大阪市中央区久太郎町2-4-31
TEL:06-6266-5330 FAX:06-6266-5369
クラボウホームページ http://www.kurabo.co.jp/cotton/index.html
以 上
(注1)IoTプラットフォーム
モノがインターネットに接続されることで様々な機能を相互制御するIoT技術において、必要な様々の機能をクラウド上で提供するサービス
(注2)暑さ指数(WBGT)
WBGTは湿球黒球温度(Wet-bulb globe temperature)の略称であり、日本では、「暑さ指数」とも呼ばれる。WBGT は、簡便に熱ストレスを評価する指標として提案されたもの