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熱中症リスク管理システムの基礎アルゴリズムと基本アプリケーションの完成について
~来春の販売開始を目指しモニター調査を継続~
クラボウ(資本金 220億円、本社大阪市中央区、社長藤田晴哉)は、本年3月より産学連携のプロジェクトとして、当社のスマート衣料「Smartfit(スマートフィット)」を使用し、熱中症予防対策に特化したリスク管理システムの開発に取り組んでおります。このたび第1回モニター調査で取得したデータの解析により、システムの基礎アルゴリズムと基本アプリケーションが完成し、10月25日よりこれらを使用した第2回モニター調査を開始いたします。また、今後想定される様々な現場に対応する通信環境を構築するため、KDDI株式会社が開発プロジェクトの新規パートナーとして加わり、株式会社セックがシステムの構築関連を担当し、来春の販売開始に向けたIoTプラットフォームの構築を進めてまいります。
1.これまでの経緯
近年、建設業や運送業など暑熱環境下にある労働現場において熱中症予防対策へのニーズが高まっていますが、職種や作業環境が異なる作業者ごとに熱中症リスクを適切に把握することは困難とされてきました。この課題に対し、当社は、スマート衣料の活用により、個々の作業者の環境や行動などを踏まえた熱中症リスクを容易に評価できるシステムの構築を目的として本プロジェクトを開始いたしました。本年5月からは、大手建設・運送会社の協力のもと、作業現場における「Smartfit(スマートフィット)」着用による第1回モニター調査を実施し、作業者の心拍数などの生体情報の取得と解析を進めてまいりました。
2.完成したアルゴリズムとアプリケーションの概要
(1)基礎アルゴリズムの開発
モニター調査により取得した作業者の生体情報をもとに、気象情報および救急搬送情報を統合し解析を行った結果、熱中症発生の主要なリスク因子である「熱ストレス(注1)」と「作業負担(注2)」を指標化できることを確認し、それらの指標を用いて、作業者ごとの熱中症リスクをリアルタイムに評価できる新たなアルゴリズムを開発いたしました。現在、広く利用されているWBGT指数(注3)を用いる評価方法では、対象となる場所全体の熱中症リスクを評価するのみですが、今回の新たなアルゴリズムを使うことにより、個々の作業者の実際の環境や行動といったデータを踏まえた熱中症リスクをリアルタイムかつ容易に評価できるようになります(注4)。
(2)基本アプリケーションの開発
新たなアルゴリズムを採用したクラウドアプリケーションの開発により、パソコンやタブレットの画面上での熱中症リスク情報の"見える化"を実現しました。これにより、建設現場の管理者は、パソコン等で「Smartfit(スマートフィット)」を着用した全作業者の熱中症リスクを同時かつリアルタイムに遠隔からでも把握・管理できるため、より早い段階で熱中症リスクへの適切な対策を講じることが可能となります。
3.第2回モニター調査とシステム販売について
実際の作業環境下でのアルゴリズムとアプリケーションの動作確認や管理画面の操作性の検証を行うため、第2回モニター調査を10月25日より開始します。今回のモニター調査は、引き続き大手建設会社・運送会社各社にもご協力いただき、11月末頃までに完了させる予定です。また、第1回モニター調査で取得した延べ約7,000人分(注5)の生体情報をさらに詳しく解析し、リアルタイムの気象情報と連動させることにより、現アルゴリズムの評価の精度向上を行います。さらには、個人の健康評価指数など熱中症対策以外の追加機能も開発し、平成30年1月からのシステム販売を目指します。
4.今後の開発体制
クラボウ |
開発プロジェクト全体およびモニター調査の統括、スマート衣料および最適な素材の開発、システムおよび「Smartfit(スマートフィット)」の販売 |
国立大学法人大阪大学 医学系研究科 医学部附属病院 |
暑熱環境におけるモニター調査のアドバイスとフォローおよび結果の医学的分析と考察 |
国立大学法人大阪大学 基礎工学研究科 |
生体情報などをもとにしたデータの解析と熱中症リスクの評価アルゴリズムの構築 |
国立大学法人信州大学 繊維学部 |
生体情報を高精度に取得できる快適な着心地のスマート衣料の開発および数値的な評価・改良 |
一般財団法人日本気象協会 |
予測モデルを構築するための気象データの提供およびモデルについてのアドバイスと指標作成 |
KDDI株式会社 ※ |
クラウド・通信環境の構築 |
株式会社セック ※ |
IoTプラットフォームの実装技術を活かしたシステムの構築関連 |
ユニオンツール株式会社 |
心拍センサの開発 |
分野別50音順、※は新規加入パートナー
5.お問い合わせ先
クラボウ 繊維事業部 技術部 開発課 担当:藤尾
〒541-8581 大阪府大阪市中央区久太郎町2-4-31 TEL:06-6266-5330
以 上
(注1) 熱ストレス:過度の暑さが体に与える悪影響
(注2) 作業負担:作業量に応じて受ける体の負担
(注3) WBGT:湿球黒球温度(Wet bulb globe temperature)の略称であり、日本では、「暑さ指数」とも呼ばれる。簡便に熱ストレス
を評価する指標として提案されたもの
(注4) 今回の熱中症発生のリスク判定基準は従来のWBGT指数に基づく方法を参考に決定しており、今後は国内における熱中症発生の実情に合わせて見直す予定
(注5) 「Smartfit(スマートフィット)」を1人が1日着用して作業を行った場合を述べ1人分とカウントする