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作業現場のリスク管理をIoTで支援する「スマートフィット for work」サービス提供開始~暑熱環境下における作業リスクを低減~
クラボウ(資本金 220億円、本社 大阪市中央区、社長 藤田晴哉)繊維事業部は、当社のシャツ型スマート衣料「Smartfit(スマートフィット)」を使用し、暑熱環境下における作業リスク管理を支援するシステム「Smartfit for work」を開発しました。建設業、運輸業、製造業などの企業向けにサービスを提供するにあたり本年5月28日より受注を開始します。
1.開発の経緯
近年、平均気温の上昇などにより熱中症の被害が増加傾向にある中、屋外や高温・多湿な環境で作業を行う建設業や運輸業などでは、暑熱環境下における作業リスク(以下暑熱作業リスク)対策へのニーズが高まっています。そのような労働現場に向けて、当社は、スマート衣料の活用によりヒト・モノ・データを統合し作業リスクを適切かつ容易に推定できるサイバーフィジカルシステム(CPS)の構築を目指し、2017年3月より産学連携のプロジェクトを開始しました。昨年夏に実際の作業現場で実施した「Smartfit」着用モニター調査(注1)で取得した作業者の生体情報を解析し、作業者ごとの暑熱作業リスクをリアルタイムに推定できる独自のアルゴリズムを国立大学法人大阪大学基礎工学研究科および一般財団法人日本気象協会と共同で開発しました。さらに個人の体調変化を把握する独自のアルゴリズムも融合し、職種や作業環境が多様な労働現場における作業リスクの低減を支援するシステムを構築しました。
2.「Smartfit for work」について
(1)システムの特長
➢「Smartfit」から取得した作業者の生体情報(心拍・温度・加速度)をスマートフォン経由でクラウドサーバーに送信し、作業地域の気象情報を融合した解析アルゴリズムにより暑熱作業リスクをリアルタイムに推定し通知します。
➢上記のほか、作業者の日々の体調変化を推定し通知します。自動学習(AI)機能により過去の個人のデータを踏まえた体調の変化が把握できるため、暑熱作業リスク情報との併用でより精度の高い作業管理などに役立てられます。
<Smartfit for work システム概要>
(2)通知できるリスク情報
暑熱作業リスク |
「熱ストレス(注2)」と「作業強度(注3)」をもとに作業者の暑熱環境下における作業リスクを3段階に推定・区分した情報。自動学習(AI)機能あり。 |
体調変化 |
「心拍指数(注4)」と「体力指数(注5)」をもとに作業者の体調変化を3段階に推定・区分した情報。自動学習(AI)機能あり。 |
転倒転落 |
加速度データにより作業者が転倒・転落状態にある可能性を判定した情報。(2018年8月頃提供予定) |
(3)リスク情報の管理画面
独自のクラウドアプリケーションの開発により、管理者は遠隔からでもパソコン等で「Smartfit」を着用した全作業者の作業リスク情報をリアルタイムに把握し、一括管理することが可能です。常時更新されるリスク情報により、画面上にはリスクの高い作業者順に表示され、そのリスクレベルに応じて警告が表示されます。高リスク発生時にはアラート通知も可能であるため迅速な対応に役立てることができます。また、作業者もスマートフォンで自分のリスク情報や体調変化、消費カロリーなどを確認することができます。
<管理者用の管理画面イメージ>
(4)スマート衣料「Smartfit」
導電性繊維と生体センサを用いて、着用者の生体情報を取得・送信できるコンプレッションインナータイプのシャツ型スマート衣料です。国立大学法人信州大学繊維学部との共同開発により、伸縮性や速乾性に優れた着心地の良さと高精度な生体情報の取得を両立しました。ファン付き作業服との相性も良好で、生体センサを取り外しての洗濯が可能です。
3.サービス料金(参考価格)
初期設定費用および月額利用料でサービスが利用いただけます。
・初期設定費用:1ユーザー30,000円(税抜)
・月額費用:1ユーザー 6,000円(税抜)
*「Smartfit」シャツは別売:1枚 4,000円(税抜)サイズ展開はS/M/L/XL/3L
4.今後の展開
建設・運輸・製造業などの企業向けにサービスの提供を開始し、作業員のリスク管理に活用していただくとともに、今後はスポーツ分野や屋外大規模イベントでの活用、また学校での活用や高齢者の日常生活における暑熱環境下でのリスク対策に向けた取り組みを進める予定です。
5.お問合せ先
■報道に関するお問い合わせ
総務部 広報グループ 担当:山﨑、本多 TEL: 06-6266-5071
■製品・販売に関するお問い合わせ
繊維事業部 Smartfitグループ 担当:藤尾、横山、小川 TEL: 06-6266-5084
以 上
(注1)モニター調査:2017年5月~9月に作業現場で延べ約7,000人の生体情報などを取得・解析。協力企業一覧は下記参照。(注2)熱ストレス:過度の暑さが身体に与える悪影響。(注3)作業強度:作業量に応じて受ける身体の負担。(注4)心拍指数:心拍データを指数化したもの。(注5)体力指数:加速度と心拍データを組み合わせて作業時の心拍の変化率を推定・指数化したもの。
共同開発体制(分野別50音順)
クラボウ |
開発プロジェクト全体およびモニター調査の統括、スマート衣料および最適な素材の開発、システムおよび「Smartfit(スマートフィット)」の販売 |
国立大学法人大阪大学 医学系研究科 医学部附属病院 |
酷暑環境におけるモニター調査のアドバイスとフォローおよび結果の医学的分析と考察 |
国立大学法人大阪大学 基礎工学研究科 |
生体情報などをもとにしたデータの解析と暑熱作業リスクの評価アルゴリズムの構築 |
国立大学法人信州大学 繊維学部 |
生体情報を高精度に取得できる快適な着心地のスマート衣料の開発および数値的な評価・改良 |
一般財団法人日本気象協会 |
アルゴリズムを構築するための気象データの提供およびアルゴリズム構築についてのアドバイスと指標作成 |
KDDI株式会社 |
クラウド・通信環境の構築 |
株式会社セック |
IoTプラットフォームの実装技術を活かしたシステムの構築 |
ユニオンツール株式会社 |
生体センサの開発 |
モニター調査協力企業(分野別50音順)
建設業 |
一般社団法人日本建設業連合会(戸田建設株式会社の現場)、株式会社大本組、鹿島建設株式会社、株式会社竹中工務店、大和ハウス工業株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、株式会社藤木工務店、その他4社 |
運輸業 |
株式会社サンワ、株式会社太陽商会 |